終わらない孤独

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思考ができない。ただ無意味に一点を凝視する。美紗の死から立ち直ろうという気持ちさえ起きなかった。 すべてが終わってしまえばいいと思った。泡が消えていくように世界がフェードアウトしてただの無になればいいと思った。 無になったところで俺に幸せが訪れることはないが、もう、何も考えられなくなるならそれでいい。そう思った。 引き出しを開ける。そこには俺らの写真の束があった。 止め処ない涙。体中の水分が流れ出そうだった。 半そでシャツの肩の部分がじっとりと生ぬるく湿った。 こんな笑顔、もう見られないのだと思えば思うほど体が震えた。 美紗の細く小さい手。やさしい香りのする黒い髪。 まだ覚えている。美紗の声。好きという言葉。 忘れてしまえば楽になれたんだろう。俺らは出会わなければ幸せだったんだろう。 生まれてきたことさえ後悔した。もう一度生まれ変われるなら美紗と会わずに一生を終えたい。 でも、やっぱり好きだった。
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