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「キアラ、行くぞ」
「はぁい」
ちゃり、と鍵を渡される。
部屋番号を確かめて、階段を上がった。
「メシ、あとで部屋に運ぶから。
出掛けるときは声かけろよ」
「わかってるってば」
まるで、過保護な父親だ。
宿に泊まるときの、もはや恒例になったやり取り。
ドアを押すと、きぃと僅かに軋んだ。
フロントの様子ほど、ボロくない。
それなりに手入れはされた部屋だ。
「ふわぁ~……」
思わず、溜め息が出た。
「疲れた……」
そのままベッドにダイブしたくなるのを堪えるのに苦労する。
代わりにそっと、ベッドの端に腰掛けた。
しばらくそのまま、ぼーっと過ごす。
頭を真っ白にして何もしない時間は、楽だけどなんだか勿体なくもある。
ふと思い直して、慎重にブーツの紐をほどいていく。
山越えがあるから、と選んでもらったこの靴は、頑丈だがとにかく重い。
「……マツトに着くころには、きっと足ムキムキね、私」
独り言で笑ってしまう私は、かなり重症の疲労だと思う。
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