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結局。目的地たる依頼主の家に着いたのは翌日の夕方のコト。
「サツキ。これ、なんて読むんだ?」
玄関にかかった表札に書かれたたった一つの漢字。
「………あか?」
確かに『紅』と書かれていた。
「へぇー、あかさんかぁ。女だったら大変だなぁ。あかちゃん、とか呼ばれちゃうぞ?」
……むむむ、それは確かに死活問題かも。きっと何歳になってもそんなからかわれ方をされるのかと思うと少し同情する。
「それは、『くれない』と読むんだよ。」
知らぬ間に玄関から出てきたのか、1人のモモと同じくらいの年っぽい男の人がそう教えてくれた。
「あ、ども。あ、えーっと…俺たち、この家の主人に用があってきたんですけど……。」
「うん。君たちがサツキとタマキだね?ここじゃなんだから中に入るといい。」
俺たちは言われるまま家の中に入った。
リビングらしきところでソファーに座る。すげー、革だよ黒革ですよ奥さん。
今まで住んでた家っつーかボロ小屋とは比べものにならないほどだ。普通の家ってのはこんな贅沢なもんなのか。
「飲み物は何がいいかな。お茶か、コーヒーか。」
男は冷蔵庫を開けてこちらを向く。
「ジュースで!!」
ためらいなくタマキは叫んだ。
「ははは、了解。サツキはどうするのかな。」
…………正直オレもジュースで!と叫びたい。なんせあの家はマジでお茶か下手したら水しかなかったし。コーヒーもモモやアコは飲んでたけどあれは苦い。まずい。
ジュースなんて滅多に飲めるもんじゃなかったのだっ………!!
「………………………………………………お茶で。」
了解、と頷いて男はグラスやらの準備をする。
くっ、我ながら何故だかわからないがあそこでジュースで!なんて言ってしまったらきっと負けなんだと思ってしまったのだ。
ガチャ
テーブルに飲み物が運ばれてくる。
コーヒーと、お茶と、オレンジジュース。
オレはなるべくオレンジジュースを見ないようにお茶を手に取った。
「さて。まずは自己紹介を。ボクは紅 征治。君たちの依頼主だ。」
くれない まさはる か。
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