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「さて、と。ちょうどいいときだったね。今は3月だし。絶好のタイミングだった。4月。つまり来週から君たちは小学六年生と高校一年生として生活してもらうんだけど……タマキ聞いてる?」    「やだ。ランドセル背負うんならオレ学校いかねー。」      ……予想以上に気にしてたみたいだ。      「えー、まぁともかく!今までの常識は全く通じないので、これから新学期までボクが世の中の一般常識をみっちり教え込むからそのつもりで!」      「うん、頼む。」      「………」     タマキはまだいじけていた。                          与えられた部屋に戻り、一息つく。考えてみればタマキとは今までずっと一緒の部屋だったから一人部屋ってのははじめてだ。      「おぉー、机だ…。」    ガラッと机の引き出しを開く。空っぽだった。      ベッドもあるし。今まで布団だったからなぁ。    おいおい、あの部屋の隅についてるマッシーンはクーラーってやつじゃないんですか。      そんでテレビ!    テレビは一応あるにはあったけどあんまりモモやアコが見ないもんだから。というよりテレビを見る習慣自体がなかったといいますか。そのせいで余計に世間知らずに育ってしまったわけです。はい。      つけてみた。      夜も10時を廻っているというのにテレビってのは休む事がない。凄い話だ。             ちょうど。やっていたのは高校生が主役のドラマ。     一人の女の子が恋をして、苦しんで。そんなおそらくは物語の『本筋』よりもオレは舞台となる『高校』を見ていた。      並ぶ机に椅子。      広い運動場。体育館。      プール。 果ては食堂なんてものまで。        「やっべ。学校超楽しそうなんだけど。」      「お前邪魔だよ。後ろ!グラウンド見えないじゃん!あれが部活ってやつか?」      登場人物に文句を言う。       ベッドにごろん、と転がってみる。      新しい暮らしに不安は確かにあるけれど。      それを何倍も上回る期待にオレの胸は踊っていた。
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