彼女

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手が、握り潰されるかと思った。 でもそんな心配はなくて、いつの間にか、香織ちゃんの左手にはカッターが握られていた。 目が虚ろで僕を見ていない。 やっと心が追いついてきて、これはヤバいな、と遅く理解した。 「香織ちゃん…それは違うよ」 声を絞り出した。 誤解を解かないと、殺されるのは確実だった。 早く思い出せ、僕は昨日何してた? 図書館でいい席を見つけて、本を選んで…あ。 「センパイノウソツキ」 カッターを振りかぶった彼女が見えた。 僕は馬鹿だ。 確かに嘘を吐いていた。 でも、それは
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