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(俺、あいつが魔術師に味方するようなことにカッとなるばかりで心配してくれたことに何も礼を言ってねぇじゃねぇか)
今から謝りにでも行こうかと一瞬だけ思う。
しかし、ああやって別れた手前また戻るには戻りづらいという思いがあった。
「……仕方ない。あきらめて支度してさっさと行くか……」
ロダンは一応一月分ほどの食糧を荷物に詰め込む。
森は広大で捜すにも足らない量かと思ったがその時はその時だと楽観視しながら。
そうして旅支度を整え、荷物と大剣を背負って家を出た。
村の中を進めば、ロダンを見掛けた村人たちがみんなで励ましながら見送っていく。
ロダンも手を振りながらその声援に答えた。
やがて森の入り口に辿り着く。
ロダンは一度村を振り返った。視線はイリアスの家の方向に向けて。
(あいつとああやって別れたのだけが唯一の心残りだな……。
…………っておい、心残りだとか縁起ねぇこと自分で考えんなよ)
ロダンはフルフルと頭を振り、パンッと両手で自分の両頬を打った。
「俺はあいつらに勝つんだよ。負けることがあるわけない!」
何せ自分の剣の腕は誰にも負けないほどに強いのだから。だからこそ魔術師討伐には自分が選ばれたのだ。
ロダンは気合いを入れると、森への一歩を力強く踏み出した。
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