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森の中を3人の男が歩いていた。その中のひとりがふと何かに気付いたように足を止める。
「ねぇ、兄さん」
「どうしたんですか? セシル」
「あそこ」
つられて足を止めたふたりは、金髪の少年の視線を追った。
「人が倒れてるようだな」
黒髪の眼鏡を掛けた青年は怪訝そうにそれを見た。
「ちょっと、大丈夫ですか?」
銀髪の青年は一番初めに倒れている男の側に行き、しゃがんで声を掛ける。
応答がないということに不安を感じて頸動脈に指を当てて脈を計る。
トクトクと規則正しく脈打っているのを感じるとホッと息を吐いた。
「生きているみたいですね。ノア、セシル、彼を邸まで運ぶのを手伝ってくれませんか?」
「ああ」
ノアは頷くと言われた通りに動き出す。
(……?)
男に触れたノアが一瞬動きを止めたのにシモンは首を傾げた。
「どうしたんです? ノア」
「いや……何でもない。さっさと連れて帰るか」
ノアは薄い笑みを浮かべながら返した。
それにはセシルが反論の声を上げた。
「兄さん、それどう見ても人間だよ!? それなのに邸に連れて行くつもりなの?」
「彼は生きているとはいえ、大分衰弱しています。このまま放ってはおけません」
シモンは静かに少年の瞳を見つめる。
「……分かったよ。本っ当に兄さんはお人好しだよね」
シモンの瞳に有無を言わさぬ強い意志を感じたセシルは諦めて倒れた男のもとに歩み寄った。
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