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「…あーあ、面倒だから…斬るか」
〝…。真ちゃん、それはちょっと〟
「冗談だよ」
当たり前だろという感じで真空は笑う。
「さて、早く解読して帰らないとな」
そう言うと真空は再び機械と向き合う。
(と言っても、いつもと違うからな)
〝…どう違うの?〟
口に出さなくとも、心で思ったこと葵に筒抜けなのだ。
(いつもなら、どこかに『古代語』があるだろ)
古代語とは、大昔の人が使っていた言葉をこの時代ではそう呼んでいる。
〝…あっても、ほとんど読めないでしょ〟
(う、…うーん)
そこを突っ込まれては終わりである。
「でも、無いよりはましだ」
真空は負け惜しみのように言う。
「!」
その時、真空は洞窟の入り口の当たりに気配を感じた。
(…誰か来たな)
〝…つけられてたの?〟
(いや、それはないだろ)
真空は纏っていたマントのフードを被る。すると、その場から真空の姿は消えた。
(とりあえず、様子見だな)
だが存在が消えたわけではない。光術を使い、光の屈折を起こしてその場に自分の姿が映らないようにしているのだ。
「おお、あったあった」「これが例のやつか」
(あれは!)
入ってきたのは、黒い鎧を着た二人組みの男。そして真空は、その黒い鎧に見覚えがあった。三年前、真空の師を死へ追い込み、真空の弟子の村を焼き払った男、『ギルバート博士』の科学の傑作。かつてその鎧には、真空の攻撃のほとんどは通用しなかった。
〝真ちゃん、ダメ!〟
「うグ!」「お、お前―」
葵の制止を聞かず、真空は二人組みの男に襲いかかった。そして一人の首を掴んで持ち上げ、もう一人の男の喉元には、腰に帯刀していた刀『両刃刀』の刃を突き立てる。
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