第一章【世界の変化】

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〝…どうしたの、真ちゃん!〟  葵の声は聞こえていたが、真空は怒りを抑えるので必死のようだ。 「お前ら、下っ端だな。…捨て駒と同じだ」 (あいつが、ギルバートが何かの鍵となる大事な古代兵器を、こんな弱者に取りに行かせるはずがない) 〝…誰でも、大切なら強い人に任せると思うよ〟  確かにそうであるが、真空の眼はいまだに洞窟の入り口を睨む。靄がかかったようにはっきりは見えないが、確かに洞窟の入り口には人影がある。そしてその人影はおそらく強者。 (まさか…な)  真空は、洞窟の入り口に居る者を気にしつつ、男達を見る。 「お前ら、このカプセルの開け方知ってんのか?」 「あ、ああ」「聞いてはいる」  男達の反応から見ても、どこか余裕がある。 (誰かが外に居るのは確定だな) 〝…どうするの?〟 (倒すよ)  葵の問に、真空は即答した。答えは決まっているからだ。話し合いをする気はないのだ。 (話して通じる相手なら…苦労はしないさ)  ギルバートに対しての真空の怒りは深い。 「急いで開けろ」  真空の声が少し厳しくなったので、男達は慌てて機械を操作する。  心を読まれないよう、男達は何も考えないようにしているようだ。 「カタカタ カタコト」  機械の操作は慣れているのか、男達は古代語を読むこともしない。 (どうやらただの下っ端じゃないな) 〝…解読係り?〟 〝ナラ、外ニ居ルノハ護送係リト言ッタトコロカ〟  真空の中では、男達には聞こえない会話がなされている。 〝戦イナド久シブリダナ〟 (できたら戦わないで逃げるから) 〝…無駄な戦いは、しちゃダメだよ〟 「!」  その時、カプセル中が動き出す。
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