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「ルイス、ルイス」
城の広い庭に、小鳥のさえずりと共に、かわいらしい声が響く。
声の主は、華やかなドレスを身に纏い、栗色のくるくるの長い髪を風に靡かせ、俺の名前を呼んだ。
「はい。姫様。
どうかなさいましたか?」
俺は、庭の一番高い木の上に腰掛けながら返事をした。
「またそんなところに!
お父様が呼んでいますわよ」
「王様が?
今日は久々の休暇のはずですが?」
「なんか急用が出来たとか……」
急用?
また、紛争でもあったのか?
「そうですか。
すぐに参ります。謁見室ですか?」
「ええ。
それと、2人の時は、敬語は辞めて頂戴って何回も言っているでしょう?」
うっ……。
「ここは城の中ですから、誰が見ているかわからないですし……」
姫が、ぶすくれた顔をする。
――ばさっ
俺は木から飛び降りて、姫に近寄った。そして、耳元で、
「ミラに、そんな顔は似合わないよ」
と囁いた。
すると、姫は赤面して、俺を見る。
「じゃあ、ミラ、ちょくら行ってくるわ」
俺は手をひらひらして、謁見室に向かった。
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