軍人と巫女

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「全く、国も人使いが荒いな。いくらリーヴルミリアに国営の施設が教会しかないと言っても、力仕事はありえん」  聞こえてきたのは低いアルト調の女の声と、 「ふふ、私にケチを付けるのは結構ですがね。いつも鞭(ムチ)を携帯してる巫女がそんなこと言っても説得力がありませんよ……」  少し嫌味ったらしい男の声だった。 「まあ、そう言うな。日頃の鞭術特訓のおかげでドアをこんなにも楽々――」 「だからそれが根本から変なんですがねぇ……」  何だかよくわからないが、非常に迷惑なことをされている気がする。主に半壊した玄関の扉からしてそんな気がする。 「…………ん、お前がグレゴリア・ルーズか?」  女が振り返る。全身を覆うような宗教的な服装に似つかわしくない、ナイスバデーな体型をしていた。 「あぁ、俺がグレゴリア・ルーズだが?」  一応、返事をしとく。まあ、何をしようがろくな目に合わないだろうがな。 「ふふ、おはようございます……。  私はハルドグリュードで軍人をしているシンダイ・レグレムと申す者です」  いきなり男が自己紹介した。こちらの印象は何か……ニヤニヤと薄気味悪い男っていうか。  それに加え格好も怪しい。軍服なのはいいとして、持っている剣の数が異様だ……。  腰の左右に二太刀、地面と平行になる形でさらに一太刀、背中にはクロスするように二太刀で、計五つの剣を携えていた。  これじゃ軍人というより行商人みたいだぜ……。 「まあ、普通にシンダイとでも呼んで下さい」  俺の疑問に満ちた目を理解しているのか、いないのか、構わずシンダイは続けた。 「それでこちらが……」  そこまで言ったところで女がシンダイを制す。
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