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「え?」
彼のものとは思えないほどはっきりとした綺麗な声が、朱李の耳から全身に伝っていく。
脳が声の意味を処理しきる前に、間抜けな声が、彼女の開きかかっていた口から漏れた。
「ご、ごめん……」
「何謝ってんの」
「な、なんとなく……」
「別に、今謝るとこじゃないでしょ。……ていうか、あんたが都筑武臣なの?」
「……ごめん」
「何で謝ってんの」
「ごめん……」
謝り続ける彼に対し、対応に疲れた朱李はため息をついた。
「ご、ごめんなさ」
「また謝ってる」
「うっ……」
「別に、あんたのこと責めてるわけじゃないよ。私はただ、あんたが都筑武臣なのかって聞いてるだけだから」
「……う、うん」
彼のその言葉を、朱李は二つの意味での肯定ととらえることにした。
そして、少しだけ黙ってから、
「やっぱ、噂ってあてになんないよね」
すると、彼は一瞬だけ困ったような笑顔を見せ、両腕でお腹を抱えてうずくまってしまった。
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