きっかけ

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  「明日の昼休みさ、屋上に来なよ」   「……え? 屋上って侵入禁止なんじゃ……」     朱李の突然の言葉に、顔を上げた彼が少しだけ目を丸くした。     「私の友達で、針金で鍵開けるの得意なやつがいるから。昼休みはいつもそこにいるんだ」   「そ、そうなんだ。……でも、俺なんかがいたら迷惑」   「じゃないから。大丈夫だから」     彼の声を遮って、はっきりと言い切った朱李。   そんな彼女の言葉を聞いて、彼は少しだけうつむいて黙った。     朱李もしばらく黙って、そして覗き込むように彼を見た。   朱李の視線が気になったのか、彼は朱李の方に視線を向ける。     「私の友達は変なのばっかだけど、みんな悪いやつじゃないから。授業ついてけなくなるし、学校はちゃんと来なよ?」     朱李がそう言って、綺麗に微笑んだ。   そして、     「さっき友達いないって言ってたから私が一人目、か。よろしく、武臣」     今度は爽やかな、しかし凛とした笑顔で。   彼は、小さく首を縦に振った。           「うん」  
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