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屋上へと続く扉の前で。
一人、武臣が佇んでいた。
何度かドアノブに手を触れようと試みるものの、直前でその手を下ろしてしまう。
彼の細い腕にかけられたブレスレット同士がぶつかる音だけが、静かにその場に響いていた。
もう何度目か分からなくなった動作を、もう一度しようと武臣が手を伸ばしかけた直後、
「都筑くん?」
背後から、ややハスキーな、しかしとても澄んだ声が聞こえてきた。
武臣がビクッと肩を震わせて振り返ると、そこには一人の少年の姿があった。
「都筑くんも屋上行きたいのか? 知っとると思うけど、屋上は鍵かかっとって入れんよ?」
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