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そう言って八重歯を見せて笑った少年は、かなり人懐っこそうな顔立ちをしている。
柔らかくふわふわとしたくせっ毛は自然な黒色で、目は猫のものにそっくりだった。
手足は細長く、姿勢からして全体的に脱力しているように見える。
物語に登場する老人のような話し方をするが、それとは裏腹に話すスピードは少し速め。
さらに、滑舌があまり良くないため、聞き取りにくい言葉がちらほらあった。
武臣が何も言わずに彼を見ていると、彼はズボンの左側のポケットから何かを取り出した。
「じゃーん」
それは細長い金属。
針金だった。
「わしが開けたるでなー」
彼はそう言うと、武臣の横を通りすぎて鍵穴に針金を通した。
数秒も経たないうちに、ガチャリと鍵が開く音がした。
「どうぞー」
扉を開きつつ笑顔を見せる彼を、武臣はただただ見つめているだけだった。
そんな武臣の視線が気になったのか、しかし不快そうな表情は見せず、彼は不思議そうに首を傾げた。
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