12人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーっ! かなちゃん、本当に都筑くんのこと知らないの!?」
隅田和高校の二年四組の教室で。
一人の少女の、やや幼い声が響いた。
彼女は保坂(ほさか)ゆゆ。
ゆるくウェーブがかった栗色の髪は肩に届くほどで、人形のようにくりくりした瞳が特徴的。
一方、かなちゃんと呼ばれた少女は、やや不機嫌そうな表情を浮かべ、左手で机に頬杖をついた状態で言葉を返す。
「知らないのが悪いみたいな言い方しないでよ」
彼女は金泉朱李(かないずみあかり)。
黒に近い茶髪は胸の辺りまでまっすぐ伸びていて、やや気が強そうだが綺麗な顔立ちをしている。
「別に悪いって言いたい訳じゃないけどー、都筑くんクラスメイトだからさあ」
「そうなの? 全然気付かなかった」
「うそーっ、もうすぐ五月だよ?」
「知らなくて悪かったね」
最初のコメントを投稿しよう!