きっかけ

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      「えーっ! かなちゃん、本当に都筑くんのこと知らないの!?」     隅田和高校の二年四組の教室で。   一人の少女の、やや幼い声が響いた。     彼女は保坂(ほさか)ゆゆ。   ゆるくウェーブがかった栗色の髪は肩に届くほどで、人形のようにくりくりした瞳が特徴的。     一方、かなちゃんと呼ばれた少女は、やや不機嫌そうな表情を浮かべ、左手で机に頬杖をついた状態で言葉を返す。     「知らないのが悪いみたいな言い方しないでよ」     彼女は金泉朱李(かないずみあかり)。   黒に近い茶髪は胸の辺りまでまっすぐ伸びていて、やや気が強そうだが綺麗な顔立ちをしている。     「別に悪いって言いたい訳じゃないけどー、都筑くんクラスメイトだからさあ」   「そうなの? 全然気付かなかった」   「うそーっ、もうすぐ五月だよ?」   「知らなくて悪かったね」  
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