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生物室まで行って、道のりも十二分に探したが、結局朱李は筆箱を見つけることは出来なかった。
今日はとりあえず帰ろう、と思った朱李は、ゆっくりと二年の下駄箱の前まで来て靴を取ろうとしたが、自分の下駄箱の手前で足を止めた。
見知らぬ男子生徒が、朱李の下駄箱の前で何かをしている。
下駄箱に両手を突っ込んで何かをしている。
やや怪訝そうに眉をひそめた朱李は、思ったことをそのまま口にした。
「何してんの?」
「わああああっ! ごめんなさいいいっ!」
朱李の声は普段通りの淡々としたものだったが、相手はかなり動揺したようだった。
その時、両手が下駄箱から離れ、
ぼとっ
何かが落下した。
「あ、筆箱」
「ごごごめんなさいっ!」
朱李がかがんで筆箱を取ろうとした瞬間、再び謝った男子生徒は背を向けて走り出した。
逃げ出した。
「ちょっ、逃げんなよ!」
朱李は素早く靴を履き、急いで逃げた男子生徒を追い掛けた。
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