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彼はすぐに見つかった。
朱李が校門を出て左右に視線を向けると、右手側の五十メートルほど離れたところで、あからさまに負の感情を背負ってとぼとぼと歩いていた。
勢いよく逃げられたからすぐには見つからないだろうと思っていた朱李は、予想を反する彼の行動に、思わず鼻で笑ってしまいそうだった。
朱李は彼にゆっくり近付き、背後から両手を彼の肩に乗せた。
「ぎゃあああっ!」
「おっと」
体を思いっきりびくつかせて叫ぶ彼に、朱李は少しだけ驚かされた。
「かかか金泉さんっ!」
「驚かせてごめん。逃げられないようにしようと思っただけだったんだけど、まさかそんな驚かれるとは……」
「ご、ごめんなさいっ」
「別に、今謝るとこじゃないでしょ。──ちょっと話したいから、近くの公園まで付き合ってもらってもいい? ここで立って話すのもなんだし。あ、もちろんあんたのこと責めるつもりは無いから安心して」
硬直している彼の様子を窺いながら朱李がそう言うと、彼はためらいながらも小さく頷いた。
「じゃ、ついてきて」
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