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歩くこと数分。
やや小さめな公園が、二人の視界に入ってきた。
「あそこのベンチに座ろっか」
「あ、はい……」
朱李がそう言って彼を促し、彼らは二人掛け用のベンチに並んで腰掛けた。
しばらく沈黙が続き──
「ねえ、よかったら名前教えてもらってもいい? こういう機会って滅多に無いじゃん。筆箱拾ってくれたついでってことで」
「……え?」
朱李がそう言うと、彼は不思議そうに目を丸くした。
彼のその反応に対し、今度は朱李が不思議そうな表情を見せる。
「? どうかしたの? まあ、言いたくないんだったら無理には聞かないけど」
「……あ、えと……お、俺のこと知らない、の?」
「知らないよ。私たち、今日会ったのが初めてでしょ? あんたは私の名前知ってるみたいだったけど」
彼の問いに対し、朱李は落ち着いた口調で簡潔に答えた。
すると、今までも挙動不審な言動が目立っていた彼が、本日最高の落ち着きの無さでそわそわしだした。
さすがに彼の様子に疑問を感じた朱李は、不思議なものを見るような目で彼の動きを見つめた。
そして、朱李が何か言おうとして口を開きかけた刹那、
「都筑武臣」
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