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一人寂しく旅をする年老いた男
冷たくどんよりした夕闇がせまる頃
辿り着いたのは深くて暗い河のほとり
河はもの言わず静かに流れる
陰うつな河を恐れる事なく
薄暗がりの中老人は河を渡っていく
向こう岸に渡った老人は河に橋をかけ始めた
近くに居た巡礼者が声をかけた
年老いた人よこんな所に橋をかけても無駄骨です
あなたの旅ももう終わりに近い
再び此処を通る事も無いでしょう
あなたはこの河を渡ってきた
こんな夕暮れに何故橋をかけるのですか
白髪頭をもたげて老人が言った
旅の途中で一人の若者に会いました
もうすぐ向こう岸に着くでしょう
私にとっては何でもない流れだが
年いかぬあの若者には渡るに渡れぬ河でしょう
この夕暮れの薄暗がりの中であの若者もここを通る
そう思ってこの橋をかけているのです
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