最後は笑顔で

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あのチビに相応しい、いや優って名前だからこそのチビなのか。 もし名前が優じゃなくて、勇輝や大和だったら性格も変わっていたのだろうか? (……そんなわけないか) 人間の性格は育ってきた環境で構築される。 名前からもそれなりに影響されるのだろうが、大した力にはならないと思う。 全ては経験だ。小さい頃からどんな教育をされてきたかで決まるんだろう。 ……俺とつぐみが教えてもらった技はそれぞれ違う型のものだった。技には適性があると爺さんは言っていた。 もし俺もつぐみが使っている型を教えてもらっていれば、今と変わっていたのだろうか。 人を傷つけることしかできない、こんな性格にもならずにいられたのだろうか。 ……そうやって、思い通りにいかない事は全部周りのせいにしてきたツケが今来たのかもしれない。 「話はもういいのか? 三谷」 「……その名字はもう名乗れないっす」 少し寂しいような笑顔を浮かべながら兄は呟いた。 「スグル……で、いいっすよ」 優と同じ意味合いを持つ自分の名――傑。 だが、優少年と同じ様な生き方は、自分にはできなかったようだ。 力を追求するのに没頭して、周りの人間を傷つけていた自分には。 つぐみはそんな俺が大嫌いなのだろう、態度を見ればすぐ分かる。 そしてそんな俺とは真逆の性格をしたチビに惹かれているようだ。 ……人の事なんてあんまり考えたことも無かったが、今心の中で確実に思っている事がある。 「……頑張れよ、お二人さん」 今まで辛い思いをした分、どうか二人が仲良く幸せに生きていけるように。 ――生まれて初めて、他人の幸せを願った。
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