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雲の隙間から射す光が二人を照らす。
二人の潤んだ目はそれに反射し輝きを増した。
まるで、これからの二人の物語を物語っているかのように……。
…………。
……。
……なんだこれは。
これは一体どういうことだ。
俺が求めていたのはこんな陳腐なものじゃない。
捕らわれの王子様を勇敢なお姫様が救い出しハッピーエンドだぁ?
「……なんなんだよ、これは」
一度心の中で呟いた言葉を口に出し、両手で頭を抱える。
突如街で起きた暴動、殴りあう警官達、そしてそんな中起こる殺人事件。
――何もかも完璧だった、何もミスなどしていない、全てが成功するはずだ。
それなのに目の前で見せつけられている現実は失敗を意味している。
「それじゃあ駄目なんだよ、それじゃあ……」
こんな結果は求めていない。
俺が考えた素晴らしいシナリオ通りに動いてくれないと困る。
いったいどれだけの時間や金をつぎ込んだと思っているんだ。
わざわざ死ぬのが辛くならないように心のケアもしてやったというのに。
あの時のガキは最高だった、写真でも撮っておけば良かった。
「……あぁ、ならもう一度、そうしてしまえばいいんだ」
伏せていた顔を上げ、もう一度二人の子どもを視界に入れる。
自分も良い場所にいたものだ、ここからならあのガキの顔がよく見える。
つかいものにならなかった駒も一緒にと思ったが警官が邪魔で無理そうだ。
腋下のホルスターに入れていた拳銃を取り出す……一度で良いから人を撃ってみたかったし丁度良い。
隠れていた物陰から一歩、二歩と歩き出す。
警察にいた頃射撃訓練は得意だった、今でも十分に中庭を挟んでいても人を狙える自信はある。
ガキは安堵しきっているし、周りの警察共も馬鹿だからか俺に気づいていないようだ。
撃鉄を起こし、ヤツの頭部に照準を合わせる。
「全部台無しにしてくれたんだ……落とし前ってやつ、つけてもらわないとねえ」
口元を吊り上げながら……一之宮京は引き金を引く指に力を入れた。
銃口を、想い人と再会できて心から幸せに浸っているだろう――――少女の心臓に向けながら。
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