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酷く体を打ちつけてしまったようだ、動こうとすれば痛みが走る。
起き上がろうと手を畳に置く……体がやけに重い。
さっきまでかなり寒かったのに、なぜか暖かく感じる。
――どうして自分は、倒れているのだろう?
たしか変な音が聞こえて、優がアタシを呼ぶ声が聞こえて……。
「……つぐみ、さん?」
あぁ、優の声がすごく近くに聞こえる。
きっと心配して来てくれたんだろう、優には悪いが少し嬉しい。
「あぁ……アタシはだい――」
ぽたっ、と赤い液体が手元に落ちた。
そういえば鉄の錆びたような……あたしが嫌いな臭いがさっきからしているような気がする。
兄と戦った時にできた傷が今になって開いてしまったのだろうか。
――そんな大怪我、していないはずだ。
それに気づいた途端、その赤い斑点は大小様々に次々と畳を汚していく。
「……うそ、だろ?」
今までに感じたことのない恐怖が体の自由を奪う。
体を起こすことも、顔を上げることさえできない。
……それでも、何が起こってしまったのかわかってしまった。
震える手で胸元を這わせる。
間違いなく、それはあった。
――あたしの体に巻きついている、優の腕が。
この重さはあたし自身のものじゃない。
この血はあたしから出たものじゃない。
全て、よりによってこんな時に抱きついてきてあたしを押し倒した――
「よかっ、た……大丈夫みたい、だね……」
――優の、ものだ。
「あら、かばっちゃったんですかぁ? まあ、結果オーライか……すみません会長、その少年私がやっちゃいましたー!」
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