transfiguration-変貌-

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 彼等の住んでいる寮は、全部で3階建てで、約150人の生徒が一人につき一部屋を借りて生活している。 もっとも、彼氏や彼女の部屋に住み着いている輩も多少はいる。 が、それだけ居る筈の生徒の気配が全く感じられない。 「おいおい…嘘だろ…?」 部屋を順番にノックしつつ呟く彼。  その時、彼は3つ程前の部屋から声がした様な気がした。 ―他の誰かか?それとも…― そう思いながら、万が一の事態の時の為、ナイフをすぐに取り出せる様にして彼は部屋に近付く。 そして、数十秒後その部屋のドアの前に着く。 ―ノックは要らない…!―  一気にドアを蹴破り、部屋に入る彼。 この際、異性の部屋であるかどうかなどと言うことは気にしないことにした様だ。 でなければ、この良く分からない状態では生きていけない、そう思った為だろう。 「誰か居るのか!!いるなら、名前を言え!」 『ヒト』であることを願っての警告をする彼。  その時、奥の方から返答。 「その声…伸一?伸一なの!?」 これもまた彼にとっては聞き覚えの有る…いや、忘れる筈がない声だった。 「由利…!?由利なのか…!?」 声は、彼の恋人である、木下 由利のそれだった。 「待っていろ、すぐそっちへ行く…!」 そう言いながら、声のする方に進んでいく彼。 勿論、ナイフは直ぐに取り出せる様にして。 「開けるぞ。」  そう言って、ドアを開けた瞬間、何かが振り下ろされる。 「何ッ…!」 咄嗟にバックステップで躱したが、ワンテンポ遅れたらそれは即、彼の死に繋がっていただろう。 ―やっぱり何か得体の知れない奴か!?― 彼がそう思った刹那、扉の陰からその犯人が出て来る。
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