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白衣の右ポケットに手を突っ込む。硬い物に手が触れた。
それを手でそっと包み込み、夕陽が差し込む長い廊下を歩いた。
俺の頭の中に、一瞬・・・彼女の顔が過ぎる。
思わず、失笑。(有り得ない)
「先生、さようなら」
横を通り過ぎる生徒たちの明るい声に、軽く返事をした。
理科準備室の扉を開け、中に入る。誰も居ない事に、胸を撫で下ろした。一番奥にある、自分の席に座り、右ポケットから取り出す。
ピンク色のウサギのストラップが付いた、ケイタイ。
持ち主は当然―俺ではない。かといって、持ち主を知らない訳ではなかった。
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