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「終わった」
終わった。
そうは言っても人生がじゃないよ?
仕事が終わったんだ。
今日の仕事はしがない暗殺依頼。
たまたま自分が勤めている会社の上層部の機密文書を見てしまった、普通のサラリーマンの暗殺。
後は、サラリーマンの家族の暗殺。
深夜、そのサラリーマンの家に侵入して、ターゲット、その妻、その母と殺していって、最後に殺したのは自分と同じくらいの年齢の女の子だった。
だけど、やっぱり自分の妹の方が可愛いと思い、手刀で首を切断して、所要時間一分未満でこの任務終わった。
それで、初めに戻ってあの一言。
「はぁ……寒い」
今は十一月の下旬。
旧暦でいう霜月。
とりあえず言いたいのは、寒いのは当たり前だってことだ。
だけど本当に寒い。
「早く帰ってあったかいレモンティーでも飲も……」
僕はそう呟くと、リミッターを少し解除し、脚に力を入れる。
その時だった――
僕の瞳に、明らかに日本人のものではない金色の髪のをした女性の姿が写る。
その人は、街灯の下で、金色の瞳を照らしながら、こちらを見詰めて立っていた。
綺麗だった。
ただ立っているだけなのに、その人からは神々しさを感じる。
ただ立っているだけなのに、僕の胸は高鳴る。
顔が熱くなるのが、寒さでよってよくわかった。
幼いながらに僕は直感した。
これが――恋なんだと。
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