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すると、見取れていた僕に向かって、その人は口元に笑みを浮かべて、ゆっくりと歩いて来た。
一歩。
また一歩。
その人が一歩歩くごとに、僕の胸の鼓動は早くなる。
理由はすぐにわかった。
というかわかっていた。
僕はこの人に恋をしているんだって――
そして、ゆっくりと歩いてきたその人は、僕の前で止まる。
「君、なかなか強いわね」
その人の第一声がそれだった。
「ありがとうございます……」
僕は、何故か緊張してしまって、その言葉はとても小さいものになってしまう。
しかし、その人は近くで見れば見るほど美しかった。
しかも、僕が一度も嗅いだことがない、不思議な香りを放っていて、だけどそれが、とてもいい香りがする。
「ふふ、君、緊張してるの? 大人っぽい顔して可愛いじゃない。ますます気に入ったわ」
その人は、そう言って微笑む。
その人は、高貴な雰囲気を放っているのに、その笑顔は不思議と可愛らしい。
「ありがとうございます……」
何故かわからないが、僕はまた同じことを言ってしまった。
やっぱり僕は緊張してるみたいだ。
「ふふふ、ねぇ君。私の恋人にならない?」
「へ?」
僕は、言ってる僕でもビックリするほどの、素っ頓狂な声をあげてしまった。
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