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「始めから、上手いプレイヤーがいるより、宝石の原石の様に磨けば凄いモノになる逸材がいた方が断然、面白いだろ?」
確かに、多田の言っていた事は一理あるなと感心しつつ、理想論っぽいとなと美作は正直そう感じた。
「でも、鍛えるっていっても総体まで二ヶ月しか時間がありませんよね?」
美作は、多田の理想論を打ち砕くような正論をぼそっと呟くように言った。
「確かに美作の言う通りだな。ただ、俺の代に間に合わなくても次の代には、十分間に合うだろ?」
(それでも、せめて一人だけでも次の総体予選に出れるような奴がいれば……)
という淡い希望を多田は口にはせず、ぐっと堪え、それ以上は何も言わなかった。
「おい!! 多田と美作。ちょっとこっちに来い」
丁度、部室に入ろうとした二人を男子バレー部のコーチである東山に呼び止められた。
「はい、わかりました。すぐに行きます」
多田と美作は、返事をし、東山が入っていった体育教官室へと向かった。
「失礼します!!」
二人は教官室に入ると窓際の席にいる東山を確認し近づいた。
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