プロローグ

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 更に輪をかけて、苦しい事情がある。  それは、レギュラーの平均身長が180センチに満たず、ここぞというところで、ミスを連発するという弱点……。  それでも、何とか食らいついていたのは、3年生エースであり、キャプテンでもある多田が孤軍奮闘していたからだった。  どちらかというと、プレイでチームを力強く牽引していくタイプの男だ。  しかし、そんな多田もゲーム序盤は好調だったものの、第2セットは、ことごとく相手ブロックに捕まった。  尚且つ、相手チームのエースにことごとくアタックを決められていた……。  エースが決められなくなるとチーム全体の勢いも極端に下がるのは、周知の通りだが、いかんせん地力の差が違う。  コーチである東山もチーム力で完全に負けている現状を打破出来る戦術が見当たず、適格な指示を出せないでいた。 (俺のコーチングは、こんなものなのか…)  そう、思わずにはいられないが、自分の無力さを噛み殺し、東山は指示を出そうとベンチの椅子から立ち上がろうとした。  その時、東山の横に座っていた人物が、その行動を遮った……。  東山の目の前には、幕張学園バレー部のジャージを着た部員が立ちはだかっていた。  彼は、2年生の美作右京(みまさか うきょう)。
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