1.特別に

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―美鈴Side 昼休み。 教室のドアがあいたと思うと 黄色い悲鳴。 あ、なんとなく分かった。 「美鈴。」 低く、甘い声。 聞き覚えがある、深い声。 気付かないふりをする。 「…美鈴。」 少し声が強くなる。 「…何か用ですか。古川先輩。」 ふん、と冷たく言う。 「美鈴、怒ってる?」 「……。」 はぁ、と少し苛立ったように 恭ちゃんはため息をはく。 「来い。」 「わっ…。は…離して!」 「黙って。」 ぐいっ、と強い力で引かれる。 いつもは私を優しく包む手が 私を壊しそう。 嫌だ。 怖い。 泣きそうになった時。 「嫌がってるんだから離しなよ 先輩さん。」 そんな声が響いた。 .
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