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カインは俺を殴ったあとふてってそっぽを向いてしまった。
俺はそんなカインの頭に、ぽんと手をのせて謝った。
「悪かったって。な?」
カインはしばらく俺を見つめると、膨れた頬がしぼんだ。
「しょうがない。許してあげよう」
カインはそういうと早速歩き始めた。
「それじゃ…しゅっぱ~つ♪」
まるで子供だ。と俺は言いたかったが、また機嫌を損ねると思い、口を噤んだ。
夜ー…
隣りの森に入った辺りで、俺達は野宿の準備をしていた。
俺達の探検、というより旅にはよくあることだ。
「ねえ、クロス兄」
カインは寝袋に入りながら話しかけた。
俺は木の上で寝る支度をしていたため、顔は向けず声だけで反応した。
「夜っていいよね~」
またか……
カインはいつも野宿をする度にこう言う。忘れているのか、はたまた知ってか、必ず言う。
「クロス兄は~?」
この質問もお決まりだ。そして俺の答えも決まってる。
「俺は……嫌いだ」
「何で何で?」
このやりとりもいつも通り。だが俺はいつも理由は言わない。
というより自分でもよく解らないのが本音だ。
だから決まって俺は
「さっさと寝ろ」
という。カインは、ちぇ~というと寝袋にくるまる。
俺はカインに視線を向ける。木の上からだとよく分からないが寝たようだ。
俺は木に寄りかかり寝そべる。目の前に神々しく光る満月。
きっと誰がみても綺麗、と言う。
だがそれでも俺は夜が嫌いだ。
「吸い込まれそうなんだよなぁ」
俺は独り言ともとれるように呟いた。
俺は寝返りをうち、月に背を向け目を閉じた。
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