惨劇に笑う悪魔

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「…ス…」 「クロス兄…」 俺は声に気が付くと、真っ暗なところにいた。 なんだここ? 「クロス兄」 俺は再び聞こえた声に振り向く ……!? 俺は目を見開いた。そこには血に染まるカインが俺を見ている。 「カイン!?」 カインの両腕はない。腕から大量の血が流れでている。 俺は駆け寄ろうとしたが……… 体が動かない!? 何故だ? 動かしているはずが動かない。俺は必死に叫ぼうとするが、声も出ない。 血に染まるカインは俺をじっと見て何か言っている。 「クロス兄…帰らなきゃ 助けてよ…」 カインは俺に背を向けどこかに歩きだす。 カインの体は徐々に闇に消える。 俺は足を動かしたくても動かない。叫ぶことも出来ない。 カインは闇に消えながら再び振り返る。その眼からは、赤い涙が流れ落ちる。 「うわああ~~!!」 はぁはぁ……、飛び起きた俺の前には大きな月。 俺は荒れた息を整えながら顔に手をやる。 「夢……か?」 手から伝わる、大量の冷たい汗。俺はうざい汗を腕で拭う。 荒かった呼吸も徐々に収まってきた。そしてふいに、木から下を見る。 ………!? カインがいない。 俺は木から地面に飛び降りる。そしてすぐさま、カインの寝袋に近寄る。 いない……… 俺は触ってみた。既に寝袋はひんやりと冷たく、随分前からいないようだ。 俺は先刻の夢を思い出す。 ………帰る? 俺は村へと走り出した。 たかが夢だ。勘違いだ。カインはちょっといないだけだ。 俺はそう思いながらも全力で走る。辺りの枝が猛スピードの俺の肌に当たり切れる。 顔や腕、足に、所々血が流れる。 何してんだ俺? カインが村に帰ってるわけがない…… しかも俺に黙って勝手に… 頭ではわかってる。だが体は止まらない。汗が流れ、切った所からは血が流れ、整えた息は再び荒れる。 昼間二人で通った森を一人で突っ切る。月はいつの間にか雲に隠れ、森を照らした光は消えた。 薄暗い森…… 獣の声……… だが俺は気にも止めない。胸につかえる何か…… 胸騒ぎ? なんだか分からない気持ち…… ただ俺の頭にはいやに鮮明なあの夢が繰り返されていた。
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