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俺は無我夢中で走った。そのため、昼間きた道のりを数時間で制覇した。
はぁはぁ……
俺は息切らしながらも足は止めない。
この森を抜ければ……
俺はさらにスピードをあげ生い茂る木々を抜けた。
森を抜け俺は初めて足を止めた。顎に沿うように流れる汗。
森を抜け、次の丘を越えれば村がある。
だがそこで俺はあることに気付く。
空が……赤い。
真夜中の時間帯。しかも月は隠れているため、明かり等在るはずがない。
だが丘の向こうの空が赤く滲んでいる。
俺は丘を駆け上がる。
心臓の音がやけにでかい。
「何だよ……これ……?」
丘から見える村の情景。空を赤く滲ませた灯りは、炎。
俺の視界に入るいたる所に火があがる。
俺は丘から滑り降り村に入った。昼間の時には想像出来ない景色。
家は壊され火があがる。煙りが狼煙のように空に延びる。
だがそれよりも俺の眼にはいるのは、辺りの血痕。
みんな逃げたのか?
村には人気がない。だがこの血の海を見て、無事だという想像が出来ない。
パキッ!
背後からの物音に、呆然としていた俺は驚いた。
恐る恐る振り返る。
………!?
俺は体が凍りついた。
目の前には夢と同じ姿のカインがいた。
「ク…ロス……兄…」
両腕の無いカインから、途切れ途切れの震えた声。
俺は夢同様動けなかった。
いや動けた筈が、
その異様でありながら見覚えのある光景に体が竦んだのか……
カインはおぼつかない足取りで一歩ずつ俺に向かってくる。
「クロス兄…みんな
みんな連れてかれちゃったんだ……」
連れてかれた?
誰に?
みんなは無事なのか?
俺は頭がごちゃごちゃになっていた。
カインは赤い涙を流し、血の道をつくりながら、尚歩みを止めない。
俺はやっと我に返り、ふらつくカインに駆け寄る。
「あいつらが……
あいつらが持ってったんだ…」
俺が向かってくのをみても、カインは歩き続ける。
「あいつら……
悪魔が…」
シュッン!!
えっ?
俺が手を伸ばすとカインは俺にもたれかかった。
だが俺の腕にあるのは、カインの『体』だけ……
「カ…イン?」
首から上がないカインの体を支える俺。
首から流れる血が俺の顔にかかった。
俺はそっと頬に付いた血を指で拭い、確認した。
「あ………」
俺は理解した。
「ああっっ~~!?」
カインは……
「あ゛あああ゛あああ~~~!!!!」
死んだ。
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