塞ぐ

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  ズルリと手が解け 村上が雪の上にグシャッと倒れた   「…え…!?村上!おい!!」   呼び掛けに反応は無く 白い息が小刻みに上る 額には寒さに相応しくない 汗の粒がつたっている   「だっ…誰か!!誰か来て下さい!!」       「………あ……ここ…」   「病院。お前風邪で倒れたんだぞ!」   「……まじで…覚えて無い…」   抱きしめたことも 覚えて無いだろう 真相を聞くのは諦めた   「あ…そっかそっか!まあ、風邪でよかったよ!」   「…お前も風邪か…?」   「え?いや、俺は大丈…」   村上の手がスッと頬に触れる かと思えば首筋を軽くなぞった   「顔も赤いし…心拍数も高いな…」   「う…だっ…トイレ!!」   俺は恥ずかしくて その場にいられなくて 走って病室を出た   「やべぇ…なんだよこれ…!!」   俺はゲイとかじゃない でも確かに抱きしめられた時 心臓が高鳴った       その後人伝に純さんと村上が 付き合ってることを知った 胸が痛くなって 自然と涙が出た   好きだったわけじゃない きっと一時的なもので 色々な緊張が重なって 錯覚していただけなんだ       自分に言い聞かせたが 涙が止まらなかった  
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