塞ぐ

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  「俺、結婚する」   言った時村上は 満面の笑みで俺を抱きしめた 村上に抱きしめられたのは これで2回目だった       あの日俺達はロケで 真冬の北海道に来ていた   「寒…」   「村上!ちゃんとしろ!」   「無理…バス戻りたい…」   弱音しか吐かない村上を 無理矢理引っ張って 現場まで歩かせた   「亘…待って…早い…」   「待たない!ほら!歩く!」   なんとか仕事をこなし 休憩に入った 村上は相変わらずの調子なので 缶コーヒーを買いに行ってやった   「えっと…どれがいいかな?」   「これ」   「うおぉ!いたのか!じゃあこれ…」   ボタンを押そうとした時 後ろから村上に抱きしめられた ジャンパーの擦れる音と 落とした財布が雪に刺さる音 そして右耳のすぐ横で 村上の呼吸が聞こえた   「あ、えっ、村上!?」   「何か…寒いのに…体が…ほてっ…」   「そっ…!!何言ってんだよ!!」   「わた…り…俺…」  
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