幼馴染の場合

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 研修会の3日後、早くも初回指導日になった。 「ここかな? 案外近いな」  俺は昨日電話で事前打ち合わせをして、その指定された時間に指導先である伊藤さんの家の前まで来ていた。  ピーンポーン 「はーい」  呼鈴を鳴らすと、家の中から二十代に見える若い女性が出てきた。  美穂さんのお母さんかな?   綺麗な人だな。 「あ、家庭教師の子?」 「はい。御堂(みどう) (はる)と言います」  その人の声は、昨日俺が電話で話した人の声だった。 「今日からよろしくお願いしますね。私、美穂の母の美咲(みさき)です。さ、上がって」 「はい、お邪魔します」  俺は家に入ると一階のリビングに案内された。   「美穂は二階に居るから、ちょっと呼んできますね」 「あっ、まずこれからの指導時間や指導内容の相談したいので、少し保護者の方とお話しさせていただけますか?」  指導する本人に会うより前に色々確認する事があって、まずは美咲さんと話さないといけない。 「そうですか。それじゃ、そこに座ってください」 「はい。失礼します」  俺は勧められたリビングのテーブルのそばに座り、説明を始めた。 「えっと、まず今後の指導時間ですが──」  それから十五分くらい指導に関する説明と、条件の確認を行った。  事前に申請のあった通り、月曜と木曜の週二回、二時間の授業を俺が行うことで問題ないらしい。そのほかにも希望する進路や現在の成績などを聞いて、大まかに問題なさそうであることを確認した。 「しばらくしたらお茶をお持ちしますね」 「すみません、ありがとうございます」  二階に上がって良いと言われ、ひとりで美穂さんの部屋に向かう。  他人のお家の階段って、なんか緊張するな……。  俺が二階に行くと、女の子風の丸みを帯びた可愛らしい字で『美穂のへや♪』とドアに書かれた部屋があった。  ノックしてからその部屋に入る。 「こんにちわ。家庭教師の御堂です」  扉が開いて、部屋の中が見えた時── 「ハル(にぃ)ー!!」 「えっ!?」  いきなり部屋の中にいた女の子が俺に抱きついてきた。  えっ、えっ!? な、なに?  なんなの!?!?  ちなみに今は8月で真夏だ。  だから俺は薄着。  もちろんそれは、この女の子もなわけで──  う、うわぁ。  なんか、凄く柔らかいものが当たってるんですけど……。  俺の腰の周りに手を回し、俺に抱きついている女の子から、女性特有の柔らかいものの感触がはっきり伝わってくる。  少しの間その感触を堪能していると、あることに気が付いた。  そういや『ハル兄』って、この子はやっぱり。 「……美穂(みほ)。お前、昔よく一緒に遊んだ美穂だろ?」 「うん! お久しぶり。ハル(にぃ)が私の家庭教師やってくれるんだよね!?」  やっぱりそうなのか。  何で名字が変わっているか分からない。  だけどこの子は、正真正銘俺の幼なじみの女の子だった。
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