幼馴染とデート

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 俺たちはふたりのお腹が同時に鳴るまで、ずっとそのベンチに座って色々話していた。  結構長い時間話し込んでいて、辺りは少し暗くなってきている。 「美穂、そろそろ夕飯食べに行こうか」 「うん!」  美穂とデートしているわけだが、この辺りにあるちょっとお高いレストランには予約が必要だ。それにまだ十五歳の美穂を連れているので、しゃれたバーにも行けない。  というわけで、比較的空いていたファミレスで夕食を食べた。  今は家に帰るため、駅に向かっている。 「ハル(にぃ)、今日はありがとね」 「あぁ、俺も楽しかった。今日は美穂が朝飯を作りに来てくれたお礼とご褒美のつもりだったんだけど……満足してくれた?」 「うん、大満足!! だって私の一番のご褒美は、ハル兄と一緒にいられることだからね」  こいつ……。  俺が恥ずかしくなるようなことを、サラッと言いやがる。 「喜んでもらえたなら良かった。ところで美穂、もう行きたいところはない? 時間的にあと一か所ぐらいだったら、たぶん行けると思うけど」 「いいの!?」  時間は八時近くになっていたが、ゲームセンターで一緒にプリクラを撮るくらいならできそうだ。美穂のスマホカバーの内側には、友達と一緒に写ったプリクラが張ってあったから。帰宅途中にあるゲーセンで、一緒に撮りたいって言って来るかと思っていた。 「じゃあ、私ね──」  とある建物を美穂が指さす。 「あそこにある、ピンクのかわいいホテルに入ってみたい!」  彼女が指差した先にあったピンクのホテルとは通称ラブホと呼ばれる大人のホテル。 「よし。やっぱり帰るぞ」 「えっ? な、なんで!?」  なんで、じゃねぇぇ!  ダメなもんはダメなの!!  ──***──  その五分後。  俺と美穂は、さっき彼女が入りたいと言っていたピンクのホテルの中にいた。  俺は『もう帰ろう』って言ったのだが……。 『ハル(にぃ)、お願い。どうしても、ダメ?』  涙目(アンド)上目遣いでそう言ってくる美穂の攻撃を、俺は躱すことができなかった。絶大な破壊力を持った攻撃を前に、俺の理性という名の鉄壁の防御は、豆腐のごとく砕け散ったんだ。  正直、入り口で止められると思った。  止めてほしかった。  でも……。  入れてしまった。 「ねぇハル兄! これなーに?」 「さ、さぁ?」 「じゃ、これは?」 「なんだろう?」 「この冷蔵庫のジュース、飲んでいいのかな?」 「わからん!」  ラブホなんて、入った事ない。  だから俺は何もわからない。  一方、部屋にあるもの全てに興味を示す美穂。  俺としてはあまり触らない方がいいと思うのだが……。本当に何が何なのか分からないので、止めようもない。 「このスイッチなに?」  ポチ  シュゴォォォォォ!! 「きゃっ!?」 「な、なんだ!?」  壁にあるスイッチを美穂が適当に押すと、急に何かが勢いよく吸い込まれる音がした。その壁際に配置された配管から空気が吸い込まれているみたいなんだけど……。  何これ!?  い、意味が分からん……。 「美穂、とりあえず落ち着いてくれ。それから、むやみやたらに何か触るのは止めよう」 「う、うん……。そうだね」  彼女は少し大人しくなったが、やはり興味は尽きないらしくずっと部屋をキョロキョロ見渡している。 「なぁ、美穂。なんでここに来たかったの?」  どこかに泊まりたいなら、このホテルじゃ無くても周りにはビジネスホテルもたくさんあった。別に俺の家でも良かったはずだ。 「んとね。ちょっと前にパパとママと旅行した時、このホテルみたいなピンクでかわいいホテルがあったの。その日泊まる場所が決まってなかったから『私はココが良い!』って言ったら、ママが『美穂ちゃん。ここには美穂ちゃんに大好きな人が出来たら、その人とふたりで来なさい』って言って、その時は入れなかったの」  そう言いながら美穂が俺に抱き着いてくる。 「私の大好きな人はハル兄だから、どうしてもここに一緒に来たかったの!!」  ……なるほどな。  ということは美穂は、まだここがどんな事をする場所かは分かってないみたいだ。  彼女がこのホテルを利用する真の目的を分かっていないのだと理解し、俺は少し安心していた。  あっ! そういえば── 「今日遅くなるって、親に連絡してないだろ!?」  安心したのもつかの間、美穂の両親に何の連絡も入れてなかったことを思い出した。  ただ、なんて言うんだ?  なんて言えばいい!?  『ホテルにいます』なんて、絶対に言えない。    どーする!?  どーするのよ、俺!! 「大丈夫だよ! ママには『ハル兄とデートしてくるね』って言ってあるから」 「あ、そうなんだ」  美穂の母親である美咲(みさき)さんは、家庭教師である俺と美穂がデートするのを認めてくれたらしい。 「……い、いや、でも。泊まりはさすがにダメじゃね!?」  この時の俺は、ラブホに休憩ってシステムがあることを知らなかった。一度中に入ったら、朝まで出られないものだと思っていたんだ。  この部屋に入ったらドアに鍵がかかって、外に出られなくなった。それに気づいた俺は、美穂を心配させないようにひとりで内心焦っていた。  ホテルなんだから、一晩経てば出られるよね? 「大丈夫だよ!」 「だ、大丈夫って、何が?」 「ハル兄と一緒にいるなら、今日はお家に帰らなくてもいいんだって」 「へ、へぇー」 「後ね。ママから『責任とるなら、いいよ』って、ハル兄に伝えてって言われたんだけど……どーゆう意味?」  えっ!?  み、美咲さん。それって──  美穂を襲っちゃってもOKってことですか!?
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