精霊

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「離していい?」 そう可憐な声で言って、少女は俺が答える前に手を離した。 俺はさっきの続きみたいにどさりと地面に叩きつけられた。 「う゛っ」 俺は呻いた。 「せめて返答をきいてから離してくれ!」 「あら、命の恩人に良い口のききようね」 言って少女はまるで害虫でもみるような目で俺を見下げた。 語るまでも無く真紅の瞳が物語っていた。 明らかに年は中学生以下。 なのにまるでどこかの王様のようなその尊大な物腰。 俺は立ち上がって土を払い、もう一度少女を見た。 背は俺の方が大分高く、よって見下す形となる。 本来であれば大きい俺の方が意図しなくとも彼女に圧力を与えているはずなのだが、見上げた少女の目に俺は思わず一歩引いた。 別に睨んでいるわけでは無いのに迫力というべきか、何やら威厳めいたものを感じたのだ。 「い、命って何のことだ。転ぶとこを支えてもらったのは感謝するけど」 「あなただって死ぬと思ったくせに」 その少女の言葉を聞いた瞬間、背中がぞくりとした。
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