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「寒そうにしてたから可哀相だと思って入ってあげたのに、とんだエロガキね」
朝食の時になっても女王様はご立腹だった。
猿だとか、獣とか、狼だとか動物園の名簿のごとく散々言われた。
しかし思春期の男子の布団に、それも暖めてあげようなんて動機で潜り込むなんて、それはもうライオンの前に子羊を寝かせるようなものだ。
俺に罪は無いと言えば嘘だが、少なくとも思春期男子には共感を得られるだろう。
しかし今回はその子羊に返り討ちにあったわけだが。
いまだに彼女の殺気が怖いのである。
「悪かったって。ほら、朝飯」
朝飯は罰として俺が作れとのことで、まあそこは命令されなくともやるのだが。
どうにか機嫌をとろうと、とらなくては殺されかねないと本能が叫んでいたので、結構腕によりをかけて作ってみたのだ。
メニューはご飯にみそ汁、だし巻き卵、鮭の塩焼きとオーソドックスだが、みそ汁とだし巻き卵には自信があるのだ。
狭い部屋の真ん中の円テーブルで向かい合いながら、俺達は静かに箸をとった。
カチャカチャと箸とおわんの音だけが鳴っていた。
長い無言状態である。
俺はついに耐えきれずに恐る恐る感想を聞いた。
レオはみそ汁のおわんの上から目を覗かせて、
「ん……まあまあね。タクマにしては意外だったわ」
とのこと。
箸を止めないとこを見ると少しは良かったように思えた。
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