精霊2

5/17
前へ
/290ページ
次へ
「寒そうにしてたから可哀相だと思って入ってあげたのに、とんだエロガキね」 朝食の時になっても女王様はご立腹だった。 猿だとか、獣とか、狼だとか動物園の名簿のごとく散々言われた。 しかし思春期の男子の布団に、それも暖めてあげようなんて動機で潜り込むなんて、それはもうライオンの前に子羊を寝かせるようなものだ。 俺に罪は無いと言えば嘘だが、少なくとも思春期男子には共感を得られるだろう。 しかし今回はその子羊に返り討ちにあったわけだが。 いまだに彼女の殺気が怖いのである。 「悪かったって。ほら、朝飯」 朝飯は罰として俺が作れとのことで、まあそこは命令されなくともやるのだが。 どうにか機嫌をとろうと、とらなくては殺されかねないと本能が叫んでいたので、結構腕によりをかけて作ってみたのだ。 メニューはご飯にみそ汁、だし巻き卵、鮭の塩焼きとオーソドックスだが、みそ汁とだし巻き卵には自信があるのだ。 狭い部屋の真ん中の円テーブルで向かい合いながら、俺達は静かに箸をとった。 カチャカチャと箸とおわんの音だけが鳴っていた。 長い無言状態である。 俺はついに耐えきれずに恐る恐る感想を聞いた。 レオはみそ汁のおわんの上から目を覗かせて、 「ん……まあまあね。タクマにしては意外だったわ」 とのこと。 箸を止めないとこを見ると少しは良かったように思えた。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

835人が本棚に入れています
本棚に追加