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歩き始めて十分、今は商店街を歩いているのだが。
姿を消すという条件でついてきたレオは一向にその姿を隠す様子は無く、むしろはしゃいでるようにさえ見えた。
「見て見て!あんな服欲しいわ!絶対私似合うもの」
古着屋の前のマネキンを指差してレオが叫んだ。
俺の腕にしがみついて大いに騒ぐレオ。
「お前本当に見えてないんだろうな?」
「ええ。当然よ」
すると俺から離れて、歩いているおそらく善良な、だけど顔の怖いおっさんの前でベロベロバーをして見せた。
冷や汗たらり、である。
しかし、おっさんはレオに目を向けることもなく去っていった。
そうなのである。
レオが姿を消してもどうやら俺には見えるらしいのだ。
そのおかげで一々肝が冷える。
クラスのやつに見られでもしたら、なんて噂されるか分からない。
「ね。もっと信用しなさいよ、私のこと」
前に回り込んでレオが言った。
「……でも、やめろよ。なんか恥ずかしいから」
「他人には分からないわ。タクマが勝手に見られてると想定して勝手に恥ずかしがってるだけ。まあ人間って、他人も自分と同じように感じ、考えてると信じて、それで逆に安心してもいる生き物だものね。不便ね」
「お前の言ってることは一々わかんないよ」
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