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商店街を抜けてしばらく経ってもレオのはしゃぎっぷりは止まらなかった。
何かあれば見て見て見て。
これでも俺はこの街で十六年は生きてきたんだ。
みんな見慣れている、いや、むしろ見飽きていた。
「せっかく私が散歩に付き合ってあげてるのに、全然楽しそうにしないのね」
「散歩じゃなくてお見舞いだろ?お前そんなこの街が楽しいか?」
「心の持ちようよ。心の在り方一つで景色は色褪せもすれば、鮮やかにもなるわ。それに、レディを喜ばせるのは男の仕事じゃない。職務怠慢よ」
僅かにレオに不機嫌の顔色が見えた。
仕方ない。
「じゃあお詫びに次のお出掛けの時にゃお前に服でも買ってやるよ」
「本当に!?約束だから!破ったらただじゃおかないわ」
「ただじゃおかないって?」
「体中の穴という穴に爪楊枝を詰めてやるわ」
「趣味、悪いぞお前」
「あら、そんなこと……」
その時不意にレオが言葉を止めた。
「ん?どうした?って痛っ」
ものすごい力で腕を掴まれた。
反射的に何か文句を言ってやろうかと思ったが、何か様子がおかしい。
レオの目は何かを凝視してるように動かない。
そしてその視線の先には一人の長い銀髪の少女が立っていた。
黒い、まるで小さなドレスのような服を身に纏い、こちらを見据えている。
あれをゴシックロリータファッションというのかもしれない。
ちなみに今、周りは雑木林の小さめな路地を歩いていて、人気はほとんどなかった。
少女は何も無い場所から突如現れた。
そんな感覚があった。
調度レオと同じような歳に見える。
その顔もまるで作られた理想形のようで、非の打ちどころが無かった。
そして、彼女のどこか悲愴めいた赤い瞳と今、目が合った。
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