835人が本棚に入れています
本棚に追加
「まるで気のたった猫ね」
銀髪の少女の声はこの静かな通りではよく聞こえた。
口元には微笑をたたえている。
しかし、一体誰だろうか。
レオのこの反応を見ると、レオの知り合いだろうか。
「あの、君は誰かな?レオの友だ……」
「タクマ!」
俺の言葉はレオの叫びに制された。
レオの手の力が一層強くなる。
「レオ、お前、離せよ、痛いだろ」
「ダメ、こいつ、人間じゃない……!」
「は?」
どこからどう見たってこんな少女が人間でないわけが無い。
「私はウツロ」
少女は自らをウツロと名乗り、一歩脚を踏み出した。
「あなたはレオっていうの?男の子みたいな名前ね」
言われてもレオは無言だった。
無言のまま俺を引っ張り一歩後退した。
「怯えなくていいわ。レオちゃんが私のお願い訊いてくれたら、私何もしないわ」
何やら嫌な感じがしてきた。
この銀髪の少女、言動もそうだがどこか不気味なのだ。
彼女を見てると、何か鋭利な刃物を突きつけられてるようなそんな嫌な感じがしてきたのだ。
彼女の白い肌が、赤い眼が、どうしてか、不快。
「何が、望み?」
レオが言った。
その声は怒りや憎悪に満ちていたが、僅かに震えていた。
少女、ウツロは華奢な腕を上げ、人差し指を此方に向け、全く予想外なことを言い出したのだ。
「その男の子、私に頂戴」
最初のコメントを投稿しよう!