835人が本棚に入れています
本棚に追加
教室に着くと、いつものようにやつが声を掛けてきた。
「よお、その顔は今日も寝坊か?顔死んでんぞ」
俺の机に来ていつもと同じようなことを言う背の高い彼はティル・マンソンジュ。
かなり明るい茶髪で黒い眉。
眉と髪の色が違う、ということで髪を染めてるわけだ。
髪を染めていれば不良って年齢でもないが、彼はどちらかと言えば不良だ。
いや、不良というか喧嘩好きと言った方がいいだろうか。
まあ、彼との出会いは奇妙なものだった。
場所は人気の無い空き地で夕暮れではなかったが放課後だったと思う。
俺は八人対ティル一人で殴り合ってるのを見て、これは卑怯だと思いティルに加勢したのだが、八人をやっとのことで退けると、ティルは今度は俺に襲いかかってきたのだ。
俺も武道を一応やっていたので難なくやり過ごしたのだが、そこでティルは何故か、
「お前と、友達になりてえ……」
と言ったのだ。
理由は俺が強いから、だそうだ。
俺だって武道やってなかったら勝てなかったろうし、別に俺自体が強いわけじゃないのだが。
というか友達になる理由がもう分からない。
どこぞの戦闘民族じゃあるまいし。
しかし、リナのせいで学校では嫉妬の濡れ衣を着ている俺にとっては、学校での友達と言えばこいつ、と一番に言える存在でもある。
「今日も説教だよ、リナの。顔色はそのせい」
俺のこのセリフを他の男子に言ったら嫌みに聞こえるだろうが、
「幼なじみも大変だなあ」
ティルの返答はこれだけである。
ティルは唯一と言っていいほどリナに興味の無い男子である。
何でもタイプじゃないらしい。
タイプとか超えて俺は可愛いと思うのだがなあ。
「お前のお守りは」
油断していた。
言うと同時にティルは俺の額にデコピンをかましやがった。
「ってえ……。朝から裏切りかよお前は」
「お前は寝坊し過ぎだからな。お前幼なじみいなかったら確実に留年だな」
さっきも似たようなことをリナに言われた気がする。
最初のコメントを投稿しよう!