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リナが倒れたのは午後になってからだった。
体育の時間、授業終わりの挨拶の時に、崩れるようにリナは倒れた。
歩くことが出来ず先生が抱えて保健室に運んでいた。
胸騒ぎがした。
あの悪い予感がその通りになってしまうような、そんな不安が心の中で膨らんでいた。
それでも俺は、ただの貧血に決まっている、きっと何でもない。
あいつのことだ、俺を見たらすぐにまた説教をしだすに違いない。
そう心の中で何度も言い聞かせていた。
だけど、保健室のベッドに横たわってるリナを見て心臓が一気に凍った気がした。
唇が真っ青になり顔色も白より蒼白に近い。
意識はあったが、目はうつろで、焦点が合ってないようにも思えた。
「リ、リナ……?」
白のベッドの横から呼びかけた俺の声は震えていた。
「ん……タクマ。何してんの、バカ。授業、もう始まるよ」
バカは一体どちらなのか。
こんな時まで、しかもそんな弱々しい声で。
俺は何も答えられなかった。
リナはその後病院に運ばれたそうだ。
体育の次の時間、救急車が来るのを俺は窓から見ていた。
「心配ねえよ。そんなお前まで青くなってたら、あの幼なじみがまた心配するだろ?」
「そう、だな」
「そう。んで見舞い行ってやれ。いつも世話になってんだから。お前の顔見りゃ元気出さざるを得ないだろ、幼なじみも」
ティルが休み時間に言ってくれた。
そんなに俺は青くなってるのだろうか。
多分、そうなんだろう。
どうしても嫌なイメージが頭から離れなかった。
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