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体の自由はきく。起き上がり、辺りを見回してみる。どうやら先程までいた『エルアーク』とは、全く違った場所であるらしい。
「……なんなのよ………。」
今だ、事態に頭が追い付いていない。その頭を、両手で抱える。そうしてから、ようやく気がついたら。
「手がある……。」
解け、崩れていた右手が元に戻っている。そして、もう一つ。左手に、なにかが握られていた。それは、まるで小さな剣を象った、奇妙な物であった。大きさや厚み的には、ちょうど本に挟む栞くらいである。
「なんだろう?これ。」
角度を変えてみたり、月明かりに透かしてみたりしてみるが、特に変わった事は見られない。存分に眺めて、これが何であるか調べようがないと判断すると、とりあえずといったようにそれをポケットにしまい、改めて、自分の周囲を見回してみる。
街、であるらしい。ただ、夜であるためか、辺りに人の気配は……
「!!」
なにかの気配を感じ、後ろを振り向く。すると、そこには影のような怪物がいた。
「う、うわあぁぁ!!」
叫びながら、慌ててその影から逃げ出す。影の方も、炎赤を追ってくる。走り始めてすぐは、ある程度距離を開ける事が出来たが、影の動きはなかなか早い。徐々に、追い詰められてくる。
「はぁはぁ……。あぁ、もう!!」
このままでは逃げ切れないと悟った炎赤は、覚悟を決め、影に向く。しかし、武器になるような物はない。拳を握り、それを影に向けて打ち出す。
ドッ
意外にも、その拳は影に当たった。だが、ダメージは殆どないらしい。どちらかというと、炎赤自身の拳の方がダメージを負っている。
「まいったな。」
後ろに跳び、影との距離を開ける。しかし、その炎赤に向かって、影は爪を振り下ろしてきた。
「たぁぁああ!!」
その時であった。影の横から、一つの人影が飛び出し、影を殴り付けた。影は少し吹っ飛び、飛び出してきた影に向き直る。
現れたのは、銀色の髪にカチューシャをし、影を殴った手に鉄製の爪を装備した女であった。
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