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「エル……アーク?」
それが、今自分がいる場所の名前であるらしい。箱舟、エルアーク。
「って、ちょっと待って、箱舟!?」
後方にあった崖に駆け寄り、そこから下を見下ろす。すると、遥か下の方、そこに雲が見えた。
「なんなの……ここ。何で私はこんな所にいるの……。」
ますますわからない。いったい、記憶を無くす前の自分は何者で、なんでこんな場所にいたのだろうか。
「あら?……ちょっと失礼。」
いつの間にか、ツヴァイと名乗った女が、後ろにいた。ツヴァイは炎赤の右手をとると、それを自分の目の前に持ってきた。自然と、炎赤の目もその手による。すると、その時であった。その手が、いきなり崩れ出した。
「う、うわぁぁああ!?」
「これは……。なるほど……。『准将』!!」
ツヴァイの呼びかけに、先程の機械人形が近づき、炎赤の体をがっしりと掴み、持ち上げた。抵抗しようとするが、力が強く振りほどく事はできない。
「円環の広間に。」
ツヴァイを乗せ、機械人形が走りだす。どこに連れていかれるのかわからないが、炎赤にとっては、今はそれ所ではない。こうしている間にも、手はどんどん崩れ、既に手首から先が完全に消えている。
「なんなの!?なんなのなんなの!?何もかもがなんなのよ!?」
「あぁ、もう!うるさいですね。」
今だ自分の身に起きた事態に騒ぎ立てる炎赤に、ちょっと呆れたようなイライラした顔で、ツヴァイが近づいてきた。十分に近づくと、炎赤の額に掌を宛てる。
「ちょっと寝ていなさい!」
瞬間、なにかが炎赤の中を貫いた。その衝撃により、息が詰まったかのように急激に静まった。それてともに、炎赤の意識はだんだんと遠退いていき、そして、ついに、途絶えた。
「せっかく円環の広間まで来たのに、迷い人殿が起きないではないか。」
「あら、ちょっと強すぎましたかね……。まぁ、このままだとまずいですし、もう勝手に適当な群書に入れてしまいましよう。」
「おいおい……。」
………
………………………
意識がだんだんとはっきりしてくる。なのに、いつまでも瞼に映る光りは強くならない。ようやく、目が開くと、辺りは暗かった。どうやら夜であるらしい。
「……今度は、どこなの?」
……See you next phase...
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