プロローグ

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「9時25分開始です」 ゆっくりとポンプが廻る。 規則的な音が微かにして、機械が運転に入った事が判る。 少しづつ赤く染まってゆく透明な人工腎臓。 回路と呼ばれる全体が赤くなれば、これから退屈な4時間が始まる。 ワンフロアを低い衝立で区切って沢山の機械が並んでいるこの部屋は、透析室と呼ばれている。 俺はそこで週に3回、4時間ずつ透析という治療を受ける。 昔から腎臓の働きが悪くて小さい頃から制限のない食事を口にした事がない俺の身体は、標準の男に比べて華奢だと思う。 身長はやっと170cmだし、体重に至っては蛋白質の制限で、筋肉のつく余裕すら無かったおかげで女の子並みだ。 こんな思いまでして頑張ったってのに、高校生になったとたん俺の腎臓は完璧に動くのを止めてしまった。
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