プロローグ

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ここではパジャマに着替えて治療を受けるものだから、身につけているのは薄い生地だけだ。 おまけに片手は機械に繋がっていて自由が利くのは右手一本だけだし、下着なんてなんの防波堤にもならない事は考えりゃ判る。 「今日、来るかい…?」 尋ねた声は俺だけにしか聞こえないように甘く囁かれる。 捕まれても決して元気にはならないが、触れられると物凄く気持ちがいい。 形をなぞるように何度か扱かれて俺はうっとりとその動きを楽しんだ。 周りは何も気付いていない。 回診といっても倉橋先生は患者とゆっくり話したいから、と看護師が傍に近付くのを嫌がる。 それを人の良さそうな顔でにっこり言われた日には誰も逆らえないんだろう。
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