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冬麻は渡されたプリントを鞄に入れて、手早く帰る用意を整えれば用意ができたと戸締まりをしていた彼の傍へと近づく。
「よし、帰るか。鍵返しに職員室寄るから先にロビーで待ってて」
「分かった…」
「寝るなよ?」
「寝ないよ!」
眠れる筈なんてない…。
こんなに緩く熱い痛みが疼くのに、眠れるわけがないんだ…。
今になって再び逢えた喜びが込み上げてきて、冬麻は教室を出るなりドアに凭れて涙が零れそうになるのを必死に堪えていた。
思い描いていた再会よりもずっと情けなくて、カッコ悪いけれど。
募る想いが一度に溢れてきそうで、ただただ涙を堪えるのに必死だったけれど。
それでも涙を堪えながら踏み出した一歩は軽く、自然と口許が綻ぶのを堪える気にはなれなかった。
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