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一ピピピッ、ピピピッ一
午前七時三十分。
目覚まし時計が在り来りな電子音を鳴らす。
数秒の後、それを無意識に止めるとまた元いた夢路へと旅立つ…一
筈だったのに久々に見た夢で今日はきちんと目が覚めた。
「ラッキ。今日は遅刻せずに済むや」
大きく欠伸をしながらそう呟き、ベッドから片足を下ろしたのは谷岡冬麻(たにおかとうま)。
顎辺りまである薄茶色の髪に、髪よりは幾分か濃い茶色の瞳を持った少年。
大きい猫目と、ふんわりと形の整った唇で可愛い女の子と言う形容が似合う高校二年生。
ベッドから下ろした足の裏から伝わるひんやりとしたフローリングの感触と肌を擦る春にしては少し肌寒い空気にベッドへの名残惜しさが募る中、そんな誘惑には負けじともう一度今度は小さく欠伸をしつつきちんとクローゼットに掛けられてある制服に着替えて、ブレザーを片手に目に被らない程度に長い前髪を掻き上げながらドアに手を掛けてペタペと足音を立てながら部屋を後にする。
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